

高校二年生の夏、わたしは依頼でとある田舎町に向かうことになった。四方を山に囲まれた人と妖の楽園。記憶にない、けれど懐かしい場所――「伊那砂郷」。そこでわたしは大切な人とこの夏を共に過ごす。
わたしと一緒に郷に来た相棒の妖、“祇王”。
依頼を紹介してくれた、ちょっと怪しい情報屋の“東雲さん”。
血の繋がらない従兄妹で2年ぶりに再会した、“愁ちゃん”。
仇を追う、少し寂しい瞳をした退魔師の後輩、“高虎くん”。
そして、初めて逢ったはずなのに、なぜか懐かしい人、“薙羽哉さん”。
簡単なはずの依頼は、謎の妖の出現によって一変する。敵対する妖たち……夜毎起きる怪異……わたしを誘う夢。思い出したくない……けど、思い出さなければならない“赤い結末”。
あの細い月が満ちた時、わたしはどんな終を見るのだろう。
運命の夏がはじまる――。