

『性悪婿』『性悪婿2』『性悪婿3』『性悪舅』の四本を収録。
『性悪婿』
★ ★ ★
透きガラスごしに、脱衣場に人の影が見えた。体の大きさからして、一目で婿だということがわかった。
「おい、今、入ってるぞ」
「お義父さん、背中流しますよ」
快活でさわやかな、男らしい声だった。日曜の朝の楽しみを邪魔されるのは困ったが、無下に断ることもできなかった。
「気をつかわんでいいよ」
「俺も入りたいんです。裸の付き合い、させてください」
脱衣場の扉を開いて入ってきた彼の体を見て、私は少なからず驚いた。服を着た上から見ても、がっちりとたくましい体をしているのはわかっていたが、こうして裸を見ると、それどころではない。体操選手か水泳の選手かと見まごうばかりの筋肉質で、男の私から見てもため息が出るほどバランスがとれて美しいのだ。年のせいにするのも卑怯かもしれないが、私は五十を過ぎていて、年なりに贅肉をためこんだ体だ。背は彼とほとんどかわらないのに、腹は出ているし、腕や足が太いのも贅肉のおかげという有様で、同じ男としては、彼のような男を前にすると恥じ入るばかりだった。
「君は、いい体しとるなあ。いったいいつ鍛えてるんだい?」
「たいしたことはしてないですよ。ちょこちょこっと暇な時にしてるだけで」
彼は笑って首を振り、シャワーをひねって湯を出すと、タオルを濡らして石けんを塗りたくった。ひとつしかない風呂椅子を前にして、スノコの上に片膝をつき、私を見た。
「どうぞ、お義父さん」
「じゃあ、たのもうか」
せっかくだから、と湯船を出て風呂椅子に腰掛けた。熱く湿った石けんの泡が、張り付くようにうなじをこすった。
「うん、気持ちがいいよ……」
「お義父さんは毛深いんですね」
「ん」
「背中まで毛が生えてる」
「うん、若い頃は恥ずかしくってなあ。今も人前で裸になる時は考えるよ」
「男らしくていいじゃないですか。俺は憧れますよ」
「まさか、君みたいな若いモンが」
「いや、ほんとに。こうして石けんで濡れると、泡にうねってはりついて、よけいにいやらしい」
「え、なんだって?」
よく聞き取れなかった。だが、彼は答えずに腰の辺りまでこすってくれた。うちの風呂椅子はスノコでできた小さなもので、私の尻だとはみ出してしまう。そのはみ出た尻まで彼は拭いてくれた。だが、たしかに石けんのヌメリはついていたが、尻に触れたその感触はタオルではなかった。それが尻の下にまで入り込み、なにかをした時、とっさにはなにをされたのかわからなかった。
「あっ、なっ、なにを……」
「ここは使ったこと、あるんですかお義父さん?」★ ★ ★
一人娘の結婚相手はさわやかでたのもしい青年。二世帯同居生活がはじまり、後は孫ができるのを待つばかりと思っていた中年主人公にのびる魔の手。
舅と婿の禁断の関係がはじまる。
SM風味が強いです。オヤジ受け。
初出『ジーメン』。(『SM-Z』だったかもしれません)
元は読み切りのつもりでしたが、その後、第二弾と第三弾と続きました。
『性悪舅』
★ ★ ★
「本当に感じやすくなったなあ。この調子ならもっと太いのもすぐに入るようになるな」
義父がなんの話をしているのか、不思議とすぐに想像がついた。僕は鳥肌をたてた。
「なんで、こんなこと、はっ、はっ、あーっ、触るな、やめて!」
義父の手がスラックスの上からごりごりと僕のそれをもみしだいた。僕はずっと勃ったままだった。そのうえ、それはすぐにのぼりつめるほどかたくなっていた。
「あっ、出ちゃう、お義父さん、お義父さん!」
僕は叫んでいた。その間、義父はうれしそうに笑って僕の目を覗き込んでいた。僕が快感の余韻に歯を食いしばっていると、顔をつかんでキスしてきた。僕はなぜだかせつなくて、自分から義父の舌を吸っていた。★ ★ ★
若い新婚夫婦はマンションに暮らしているが、お産をひかえて妻の実家に戻ることに。そこで舅に襲われ、手込めにされてしまう主人公。娘婿に対する異常なほどの義父の執着心が描かれる。
『性悪婿』シリーズのスピンオフ作品。
初出『Super SM-Z』。