

『嗅ぐ極道』
今や高畠組のナンバー2としておそれられている沢渡だが、十年前、敵対する極道にヤキを入れられた時のトラウマを引きずっている。
殴られ、顔を踏まれたその○○と、男の足の臭いとが沢渡の記憶に刻まれて……。初出『Super SM-Z』
『掘ってくれ』
十代の頃から工房をかまえている若い彫金士が主人公。
職人一人で商売をしているしっかり者だが人付き合いが苦手。特定の相手と続いたこともない。相手に求める一番大事な点はただひとつ。
タチであること。
とにかく掘られることが命。
そんな男の工房に中年男と若い男のゲイカップルが客としてやってくる。若い方はいかにもチャラチャラとして中年男にたかっている風だが……。初出『バディ』。読み切り短編。
『短気な男』
短気で無口で気難しい男。いつもムスッと怒ったような顔でいるが、五年付き合った自分には何をどう思っているのかわかる。同じムスッと怒っているような顔でも、ただ黙り込んでいるのか、照れているのか、実は求めているのか……。
五年続いたカップルが温泉旅行に出かける。いつもどおりムスッと怒ったような顔の恋人だが、慣れた二人の間では何か言いたいことがあるとわかってしまう。浮気したんじゃないか、結婚したいんじゃないか、あの手この手で聞き出していく。
初出『バディ』。連作ゲイカップルの一日シリーズの第二回。連作といってもバラバラに読んでも問題ないようになっています。
『君とキスをする時』
浪人生のりゅうは東大を目指している。事故で両親と従兄弟を亡くし、従兄弟の親である叔父の家に暮らしているが、叔父は息子を亡くした悲しみからりゅうにつらく当たる。
小さな町工場の社長、小山内は不景気から借金を繰り返しサラ金に追われている。妻は事故で赤ん坊を亡くし心を病み、もう一人の娘はグレて高校を中退し、不良仲間と町をうろついている。
親子ほど年の差のあるりゅうと小山内だが、傷ついた者同士、心も体も結ばれ、ひとときの安らぎを見出すが……。
初出『バディ』。掲載当時三回連載だったものをひとつにまとめてあります。